老後2000万円報告書は現代版の「パンがなければケーキを食べれば良い」

老後に2,000万円が必要となる金融庁の報告書が問題になっています。炎上している理由は

「今さら2,000万円準備しろと言われても無理」ということですよね。金融庁はこの2,000万円を補うために「金融資産(株や投資信託など)に投資をしてくださいね」と報告書で書いています。

直感的に「なんかズレてる」と多くの国民が感じたのではないでしょうか。あれ?なんかこれと似たような言葉が・・・・、それが

マリー・アントワネットの「パン(お金)がないならケーキ(金融資産)を食べれば(保有すれば)良いじゃない」という有り難いお言葉です。(※諸説あり)

まさに王族が民に対して「お腹が空いてるなら、何でケーキを食べないの?」と真顔で聞いているような印象を受けるのです

そもそも「どうして金融庁が老後対策してるの?」となりませんか?

企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指すことを目標とし、金融行政に取り組んでいます。

引用:金融庁

金融庁の理念としては上記のように「企業の成長と国民の資産形成の増大を目指す」役所であることが分かります。

老後の問題というのは、大きく分けると「健康」と「お金」「家族」の問題があります。このなかで金融庁は「お金」の面から老後問題にアプローチしています。お金の面から「だけ」で老後問題にアプローチすると「かなりの確率で炎上」します。

もっと大きな枠組みで対策をする必要があります。ただ報告書としては「ものすごく分かりやすい」です。さまざまな問題について網羅的にまとめられています。

ただ「誰に対して言っているのか?」が不明確な印象です。現在60代の人に向けて言ってるのであれば論外ですよね。恐らく「若い人向け」に早めの資産形成を促す報告書なのですが、これにも問題があります。

そもそも「若いうちから金融資産を保有できる層」は、そこまで切実に老後を心配していません。「金融資産を保有する余裕がない人に、金融資産を保有するように」と勧めるからおかしくなります。金融資産を保有している人は「余裕資金で購入している」のがほとんどです。非正規労働者が増えている現状のなか、余裕資金がない人に「金融資産を保有して2000万円貯めましょう」と真顔で言われても、「え?エ?江?」となるわけです。

この点を理解していないため、

マリー・アントワネットのように「パン(お金)がないならケーキ(金融資産)を食べれば(保有すれば)良いじゃない」

と報告書で書いてしまうわけです。

報告書の問題点は「金融の専門家が現実を分かってない」

今回の報告書は、金融サービス提供者や専門家の意見も取り入れつつ検討した結果であると書かれています。

市場ワーキング・グループにおける、高齢社会における金融の目指すべき姿とは何かをテーマに、金融サービス提供者や専門家の意見を伺いながら議論を重ねた検討結果である。

引用:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

報告書のなかでは「NISA」などの少額投資をしながら資産形成を進めていくことを奨励しています。確かに少額投資をできるのは非常に魅力的ですが、現在は「少額投資するなら、そのお金で日々の生活費の足しにしたい」という人が増加しています。

簡単にいえば「食費を削ってまで投資はできない」のです。

私がマリー・アントワネットの「パンがなければケーキを食べれば良いじゃない」という発言をご紹介したのはまさにこの点です。

つまり今回の報告書では「お金がないなら投資をしましょう」と書かれています。何かおかしいですよね。

「分かってない」と感じませんか?誰でも金銭的に余裕があれば「金融資産への投資」にお金を回します。しかし日々の生活で金融投資に資金を振り分けることができないので、老後に不安を持っているわけです。

しかも「日本は借金漬けで財政破綻する!税金アップ!」と違う役所が言っています。「日本が潰れたら金融資産も紙くずになる」ので、金融資産を保有しても貯蓄よりも良いのかどうかがよく分からないのです。

縦割りのせいで結論がおかしくなってる

報告書の結論が「老後のために金融資産の保有」と最初から決まっているので、イマイチピンときません。ただ報告書全体を見ると本当に分かりやすくまとめられていて、非常に有益な情報が網羅的に詰まっていますが、結論だけがグイッと金融資産に寄ってるのです。

特に報告書のなかに書かれている

  • 日本の高齢者は世界トップレベルで優秀(60 歳から65歳の日本人の数的思考力や読解力のテストのスコアは OECD 諸国の45歳から49歳の平均値と同じ水準※引用金融庁報告書

というのは、高齢者の労働意欲を増加させるためにももっと活用すべき情報だと感じました。またヨーロッパと日本・アメリカ・韓国における労働に関する意識が違うのも面白いです。

日本などは65歳以上になっても50%以上の男性が働いていますが、フランスでは10%弱です。このように「65歳以上でも労働する人が多い」のが日本の特徴でもあります。70歳を過ぎても労働する予定と答えている人も多いです。

報告書でも書かれていますが、日本の場合65歳ぐらいでも「総じて元気」なのです。65歳以上でも働く人の場合、老後の必要資金はもっと軽くなります。こういった日本独自の事情も考慮せずに

「65歳以上では2000万円が必要」と金融資産を買ってもらいたいために不安を煽るような書き方をするので、炎上する結果になります。そもそも金融庁というか厚生労働省の管轄の気がします。こういった「包括的な国民のライフスタイル」というのは。それを金融庁が「金融の観点から」まとめるとおかしくなりますよね。

どうしても「金融資産を売りたいから老後の資金問題の不安を煽っている」ように見えてしまいます。

資産形成よりも「退職金制度」からアプローチすべき

資産形成よりも「退職金の制度を整える」ほうが早いのではないでしょうか。税制面からのアプローチで、企業側にも「従業員に対する退職金の支払い」を優遇するような制度を整えてほしいところです。こうすることで正社員を希望する人が増加し、企業側にとっても離職率の低下も期待できます。

資産形成を促すだけではなく、「退職金制度」が整えば、現在の若い人たちも安心して仕事に取り組むことができます。そのためには企業側にもメリットが必要で、退職金を積み立てることで税制が優遇されれば「実質的な法人税の引き下げ」にもつながるので、日本の会社の競争力がつくのではないでしょうか。

というか、インフレになったら自然と金融資産への投資に向かうことが考えられるので、「インフレ目標を達成する」のが一番効率的だと思います。

参照:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

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